診療科・部門のご案内

形成外科

顔面神経麻痺後遺症(病的共同運動・顔面拘縮)に対する治療

ベル麻痺やハント症候群などの末梢性顔面神経麻痺により高度の神経障害をきたした場合、顔面神経の回復過程において、神経の迷入再生による病的共同運動(元の神経回路とは異なる方向に神経再生し、本来支配すべきでない表情筋を誤って再支配してしまう状態)や顔面拘縮(表情筋の過緊張に伴うひきつれ感)が出現します。このような後遺症に対しては、まず表情筋に対する伸長マッサージや脳の可塑性を利用したリハビリテーション(ミラーバイオフィードバック法など)を行いますが、症状の改善が乏しい場合はボツリヌス毒素の局注療法や選択的表情筋切除術(拘縮や病的共同運動の原因となっている表情筋の一部を切除する)、選択的顔面神経切断術などを適宜組み合わせた治療が必要となります。

ボツリヌス毒素局注療法

病的共同運動や顔面拘縮を引き起こしている表情筋内にごく少量のボツリヌス毒素を注射することで、筋肉の緊張を緩和して症状を抑制します。局注後数日より効果が表れて、約3~5か月は抑制効果が継続します。効果が切れた場合も繰り返し治療を行うことにより再度治療効果が得られます。

選択的表情筋切除術
(selective myectomy)

主に口を動かしたときに瞼が閉じてしまう病的共同運動(oral-ocular synkinesis)や顔面拘縮に対して行う外科的治療です。下眼瞼または睫毛下切開により眼輪筋の上を剥離して、閉瞼(まぶたを閉じる)に最低限必要な眼輪筋を温存した上で、病的共同運動や顔面拘縮の原因となっている眼輪筋、上唇鼻翼挙筋、上唇挙筋などとそれを支配する顔面神経分枝を一塊に切除する方法で、局所麻酔下での治療が可能です。術後は皮下出血による腫脹や一過性閉瞼障害(一時的にまぶたが閉じづらくなる)を認めることが多いですが、徐々に回復していきます。筋肉の切除量が少ない場合は症状の再発の可能性があり、切除量が多い場合は下眼瞼外反(下まぶたが外側にめくれた状態)という後遺症が残ることがあります。前者の場合は追加切除を、後者の場合は程度に応じて瞼板吊り上げ(瞼板という軟骨性支持組織を外側にけん引する)による追加治療を行うことで修正が可能となります。この手術により半永久的な効果が期待できます。

選択的表情筋切除術
選択的表情筋切除術

選択的表情筋切除術

選択的顔面神経切断術
(selective midfacial neurectomy)

神経の迷入再生による病的共同運動(元の神経回路とは異なる方向に神経再生し、本来支配すべきでない表情筋を誤って再支配してしまう状態)や顔面拘縮(表情筋のひきつれ)を改善させる近年注目されている新しい治療です。
全身麻酔下にフェイスリフトに準じた切開を行い、神経刺激装置を併用しながら病的共同運動を起こす可能性のある顔面神経分枝(頬骨枝・頬筋枝)を探し出します。神経切断に伴う麻痺の増悪(まぶたが閉じづらい・口すぼめができない)を予防するため、眼輪筋や口輪筋を支配する神経分枝は温存します。症状に応じて先に述べた選択的表情筋切除術を併用することもあります。
術直後より改善がみられますが、神経再生による影響により後戻り(症状の再発)の可能性があります。また、神経切断により口角挙上機能が一時的に悪化する可能性がありますが、徐々に改善していくことが多いです。さらに、術前からもともと口角挙上機能が悪化しているのに加えて、口角下制筋による病的共同運動により、笑う際に口角が固定または下垂する状態が目立つ場合には、口角下制筋の切除や口角下制筋移行術などの併用が有効となることがあります。

選択的顔面神経切断術
(selective midfacial neurectomy)

病的共同運動の原因と考えられる顔面神経分枝(赤い範囲)を切除します。その結果として、グレーの領域の筋力低下による病的共同運動の中長期的な軽減を図ります。

選択的顔面神経切断術

選択的顔面神経切断術